コーチン執筆
| | 君とのデートの待ち合わせ場所は、いつも決まっていた。
レストランが決まっていたのではない。
むしろレストランは、いつも違っていた。「今日、ごはん食べようか?」
僕は、君に電話した。「ゴメンナサイ、今日、夕方から打ち合わせがあるの」
ここで、「じゅぁ、今度にしよう」と言ったら、いい女とは、一生デートできない。
いい女は、忙しいからなのだ。いい女は、
三時間後のスケジュールだって未定なのだ。
「打ち合わせ。何時ころ終わりそう?」
「すぐ終わると早いんだけど、こじれると、結構かかることもあるのよ」
怒ってはいけない。打ち合わせとは、そういうものである。
でも、僕は、あきらめない。「打ち合わせは、何時から?」
「6時から」
「それじゃぁ、とりあえず、8時にっていうのはどう?」「万が一、遅れてもいい?」
「いいよ、じゃぁ、『P』で、待ってるから」「ありがとう、急いで行くわ」
僕たちの、約束は、いつもこうだった。
僕が『P』に着いたのは、8時5分前。
ちょうど、君から、携帯に電話が入る。「ごめん、まだ終わらないの」
「いいよ、バーでメニュー決めて、待ってるから」
君との、待ち合わせは、いつも、現地集合。
君を、ウェィティングバーで待つ。外国人のモデル風女の子が、一人で本を読みながら
待っている。これが、なかなか、オシャレだ。
ウェィティングバーを使っているのは、ほとんど外国人だ。
日本人のカップルは、必ず二人でやってくる。場所を知っていても、近くのどこかで
待ち合わせをしてくる。これが、オシャレじゃない。
「どこで、待ち合わせる?」「どこでも言って」「どこわかる?」「え・・・と・・」
「本屋さんわかる?」本屋さんで、待ち合わせなら、まだ、オシャレなほうだ。
「わかんない」「CDショップ。わかる?」「わかんない」
結局、駅になってしまうから、悲しい。
携帯の、バイブレーターが振動する。
「ごめんなさい、今、終わったの。これから急いで行くから」
「いいよ、あわてて事故にあわないように、気をつけてね」「ありがとう、待っててね」
僕は、君の、「待っててね」という言葉が好きだ。
「待っててね」という言葉さえ聞けたら、いくらでも待つことができる。
デートは、待つことも楽しみだ。
今、待っているのが、駅のゴミ箱の横でなくてよかった。
携帯が、また、振動する。
「愛してる?」
君に、
運転中でも話せるハンズフリーの携帯電話マイクをプレゼントしておいてよかった。
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